http://martinfowler.com/bliki/AgileCertification.html

アジャイル手法に資格試験は必要か?

認定資格はソフトウェア業界ではごく一般的なものだが、私の知る有能な開発者たちは、こぞって資格に興味を示さない。というのも、資格試験を持っているからといってその人に能力があるわけではない、というのが一般的な見方だからだ。冒頭のような疑問が出てくるなんて、アジャイルコミュニティをCMM の認定機関か何かと混同しているんじゃなかろうか。

資格試験がダメなところは、試験内容がへっぽこな点だ。だいたいが選択式の問題だったりする。これだと問題を作るのも簡単だし、解答もマークすればそれで済むからお手軽。だけど、機械的に覚えたものをチェックしたところで、だから何だというんだ。他にもある。ソフトウェア産業に限ったことではないが、資格試験そのものが産業になっている。産業だからテストは増殖するし、試験内容が変わりましたとかなんとかで、すぐにマージン、マージン、マージンである。

だから資格試験はダメだ、ということではない。本当に能力に見合った資格試験というものが、今後、出てくるかもしれない。ただ、ことアジャイルに関しては、そう一筋縄ではいかないのだ。

計画駆動型プロセスの肝は、その一貫性にある。チームや組織が決められたプロセスにどれだけ従っているかをテストすれば、資格試験も行うこともできるだろう。翻ってアジャイルの世界では、すべてのプロセスは自己適応型である。つまり、状況に合わせてプロセスを変えていくようあらかじめ期待されているのだ。これでは、試験内容を作るのは非常に困難だ。

XP Universe 2002 の後の飲み会の席で、XPの資格試験をやるとしたら何が必要か、なんて会話をしたのを覚えている。こんな具合だ。おそらく、数週間かけて観察することになるだろうな。ソフトウェア開発の各工程においてどのような行動をとったか、どのようなスキルを使ったかを見るよなあ。もちろんプロセスのチューニングも見とかなきゃいけないな。なんてね。でもこれってめちゃくちゃコストがかかるんだよ。誰がやってみない?

まあ、いろいろ不安はあるけど、ソフトウェア産業が意味のある資格試験を見出せるようだったら、私が考えてもいいかな。しっかりとした資格試験があれば、能力のある人を区別できるようになるかもしれないし、やる気のあるひとにちゃんとスキルに見合った仕事を提供できるようになるかもしれないしね。でも、ソフトウェア業界が単一のスキーム上にあるとは到底思えない。だから、SWEBOKなんてのは疑わしいったらありゃしない。ただ、派閥毎には可能かもしれない。例えばXPの試験とかね。そういうのならあり得る。でもそれは、今考えているような「資格試験」とは全く違ったものになると思う。