http://martinfowler.com/bliki/C3.html

C3はクライスラー総合報酬プロジェクト(Chrysler Comprehensive Compensation project)の略称です。これは、クライスラーで実施された給与計算プロジェクトで、エクストリームプログラミングの誕生の地として、その後、名を知られるようになりました。

このプロジェクトは、それまでにあった多くのCOBOLベースの既存給与計算システムをリプレースしようとするものでした。私は1993年以来、コンサルタントとして様々な形で係わってきました。プロジェクトは1995年にSmalltalkによる本格的な開発作業をいくらか始めましたが、安定した状態に達することができず、1996年に Kent Beck の指導のもとで仕切り直しました。この、再開後のプロジェクトで、エクストリームプログラミングとして知られるようになる全てのプラクティスが初めてまとめ上げられたのです(もっとも Kent は、これより前の[複数の]プロジェクトでも同様のアプローチを使っていましたが)。

ソフトウェアは1997年に稼動し、約1万人に対する給与計算に使われました。給与計算対象とする従業員の割合を拡大すべく、プロジェクトは継続されましたが、1999年に新規開発は中止されました。その後、本番システムはCOBOLに戻されました(最後に私が聞いた時には、既存システムで処理できない少数の人々に対しては新システムが給与支払をまだ行っているということでしたが)。将来はERPシステムで給与計算を行うというもくろみがあるとも聞きました。

C3の初期の成功はXPにとって素晴らしい刺激であり、C3はXPの道を切り拓く上で重要な役割を果たしました。プロジェクトが中止された時点までに、XPを発展させ続けるのに十分な数の他のプロジェクトがC3の初期の成功を再現していました。C3がキャンセルされたことは、しかしながら、XPが成功を保証するものではないことを証明するものでもあります。

多くの人がC3の成功と中止を分析しようとしてきました。私は、事実についての多くの知識に基づいた分析を見たことがありません。私は、フルタイムでチームに関わった人々から、全般にわたる解説がもたらされるべきであると、ずっと感じており、そのため、私自身は何も書いてきませんでした。私はパートタイムで1996年の終わり頃まで参画したのにすぎないのです。

C3チームメンバーの多くは、クライスラーの内外でXPの仕事をさらに進めてきました。あるグループは、バグが超少ないプロジェクトの一例として注目すべきプロジェクトで、XPを広範囲にわたって使いつづけています。


  • 2004-03-26 (金) 21:46:03 ‘’[[keis]]’’ : 訳してみました。
  • 2005-05-04 (水) 15:11:41 ‘’[[keis]]’’ : C3について、Kent Beck が Extream Programming Explaind(Second Edition) で説明しています(Chapter 17)。それによると、システムは3年間の本番稼動ののち2000年にキャンセルされましたが、その理由は次の二点ということです。(1)この時期までにSmalltalkではなくJavaがオブジェクト技術の主流になった。ほとんど使われていない言語で書かれたシステムを維持し続けることを、クライスラーは望まなくなった。(2)C3はもともとオブジェクト技術のパイロットプロジェクトとしてIT部門の予算でまかなわれてきたが、以降のフェーズについては資金を負担するようIT部門から経理部門に要請した。経理部門はこれを受け入れなかった。