アジャイル界隈に長く関わっているならば、「サーバント・リーダーシップ」という概念を聞いたことがあるだろう。これは、マネージャーの役割を、チームをサポートし、障害物を取り除き、企業活動における予想外の出来事からチームを守るものとして見直す、というものである。だが、私にはしっくりこないところがあった。最近、ケント・ベックと話をするなかで、その理由が明らかになった。これは「ガスライティング1」なのだ。マネージャーは自らを「サーバント(奉仕者)」と称しているが、実際に権力を握っているのが誰なのかは、誰もが知っている。

同僚のジャイルズ・エドワーズ=アレクサンダーが、リーダーシップに対する別の考え方を教えてくれた。彼がメンタルヘルスの専門家たちと一緒に仕事をするなかで出会った考え方だそうだ。この考え方では、リーダーは「ホスト(主催者)」の役割を担う。リーダーは、適切な空間を整え、チームを招き入れ、アイデアや課題を提示してから、あとは一歩引いてチームに仕事を任せるのである。ホストは理想的なサーバント・リーダーと同じようにチームに気を配るが、解決すべき事態が発生したときには介入する権限も持っている。

  1. 訳注:ガスライティングとは、相手に「自分が悪い」と思わせる心理的操作の一種(参考:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/contents/dic-gaslighting.html)