http://martinfowler.com/bliki/LeadershipDivide.html

企業が大きくなるにつれ、どのように、そして、誰がリーダーを選ぶのかが懸念事項となってくる。 多くの企業にはオーナー(株主)がいて、彼らが取締役を任命する。 そして、その取締役が企業のほぼすべての事項について決定を下す(少なくとも彼ら自身がやることくらいは自分達で考えるだろう)。

みんなは気付いてなかったかもしれないが、 我々は上記の方法とは異なるやり方に挑戦している。 Royは今の筆頭株主だが、彼は意思決定を自分でやりたがらない——だが、会社を変革しようとしている。 つまり、この会社はまさに従業員によってコントロールされているのだ。 国際企業において「完全に従業員がコントロールしている」というのは、 ありえない話である。 だが我々には、株式を公開することに興味はないのだ。

意思決定を会社全体にまかせるというのは、まあいいだろう。 だが、それを実際にうまくやるにはどうすればいいのだろうか? 優秀な人材は数多くいる。 彼らは、企業がどのように運営されるべきかについて自分なりの意見を持っている。 だが困ったことに、そのような連中はみなクライアントのために仕事している。 ThoughtWorkersの多くは、クライアントの業務に忙しく、 会社の業務や戦略などを考えている暇などない。 そのため、我々は会社の業務に集中する業務管理チームを設けている。

しかし、問題は残る。 この業務管理グループが伝統的な(日々の納品業務から遠ざかっている)取締役グループのようにならないためには、どうすればいいだろうか? すでにお互いに「我々と彼ら」という心理が予想以上に芽生えだしている。 (それでも、私が今まで見てきたものよりかはずいぶんマシだが。)

この問題の救いは、納品業務(とくにテクニカル業務)のみんなが、 業務管理にまったく興味を持っていないことだろう。 彼らは、現在関わっているプロジェクトと一般的な技術の話にしか興味がない。 実際、それで頭はいっぱいになる。 需要と雇用とのバランスをとるとか、 リソースマネジメントをするとか、 クライアントを確保するとか、 バランスシートとにらめっこするとか——そういったことにはまったく興味がない。

白状すると、実は私もそうなのである。 入社したとき、Royに、どのミーティングでも好きなように暴れてよいよという全権委任をもらっていた。 だが、業務委員会ミーティングに連れて行かれても、 議論の内容については、ほとんど興味を持てなかった。 重要なことだというのは分かっている。 ただ、私がやることではないと思う。 仮に私が業務管理に向いてるとしても(向いてないと思っているけどね)、やはり、通常の業務ほどエキサイトするものではないと思う。 貴重な時間は通常の業務に当てたい。

geekたちの意思や適性を考えず、問答無用に彼らを業務管理チームにぶちこむというのは私の好みではない。 得意ではないことをやらせて個人的な負担を増やすよりも、 みんなに得意なことをやらせて、チームとして調和がとれるようになったほうがいい。 だから、業務管理のことが好きだったり、向いているような人が業務管理をやればいいのである。 ただ、彼らの決定が納品業務を行う人間にも大きな影響を与えてしまい、 悲惨なギャップを生んだりもする。 納品業務を行う人間は業務管理の人間に対して、生活(とThoughtWorksの規約)を乱すんじゃねーと不満を言う。 業務管理の人間は、本物のビジネスを理解してねェーーと言って納品業務の人間に文句を言う。

もう争いはやめて、問題をしっかり把握して(よくある問題だと思うし)、どうにか解決策を見出そうではないか。

当然、私もだ。

もっと小さな組織だと個人的なつながりで、このギャップを埋めることができる。 もちろん我々だってやっている。だが、それを広げるのが難しいのだ。 Royには信じられないくらいの人脈がある。 だが、彼にも限界がある。 他のリーダーはこのスキルを共有できない。 だが、その他の重要なものに関してはテーブルに載せることができる(例えば組織力といったものだ)。 社会的ネットワークのハブになるということは、 たとえそれで広がるとしても、業務管理の任務ではない。

ちょっと考えたのが、コミュニケーションの橋渡しとなるような委員会を設けることだった。 納品(およびサポート)業務を行う人間で委員会を編成し、 定期的に集まって、お互いに不満を言い合うことで 両者のコミュニケーションチャンネルとするというものだ。 この委員会は将来的に、戦略的リーダーシップグループへと進化するかもしれない。 などと思っていたのだが、今のところぐだぐだな状態になっている。 我々はまだ諦めていない。 だが、納品業務のトップの人間をクライアントから一週間も離してしまうというのは、ビジネス的にもったいない。

もうひとつ試みていることは、業務管理への異動である。 つまり、業務管理部門に数年在籍し、それからまた納品業務へと戻るわけだ。 このことにより、業務マネージャが納品業務の人間よりも「偉い」わけではないことが分かる。ただ、「異なる」だけなのだ。 Royもこのローテーションの最中で、今は納品業務に携わっている。

ただし、こうした手法は単なる実験である。 我々はこの大きなギャップの橋渡しとなる有効な手法を、 これからも見出していこうと思っている。