オープンスペース
http://martinfowler.com/bliki/OpenSpace.html
「オープンスペース」とは、個人が主催するカンファレンスをうまくやるための手法だ。 1997年にNorm Kerthに紹介されて以来、私はこの手法が頻繁に使用されているのを見てきた。そして、また、私自身もよくこの手法を使用している。 12〜24人程度の小規模グループから100〜200名程度の大規模グループまで、この手法は非常にうまく機能しているようだ。 ここ1〜3日の間にいろいろ目にしたので、これまで経験した活用事例を交えながら紹介していこう。 Crested Butteは、毎年開催されている20名程度の小さなワークショップだ。 Agile Universe 2002では、100名ほどの参加者が集まったが、あるトラックでオープン スペースを採用した(その後も継続して行っているようだが、私は参加できていない)。 foocampでは、数百人規模でオープンスペースを行った。 この手法はHarrison Owenによって開発されたものだ。 詳細については、彼の著書に記されている。
オープンスペースが一風変わっている(が強力な)のは、内容やスピーカーを事前に計画しなくても良いという点だ。 代わりに、「時間」と「場所」を記したスケルトンを用意する。 そして、参加者自身が実際に何が行われるかを導き出していく。 こうすることによって、参加型のエネルギッシュなイベントになる (これは、段取りの作業の軽減にもつながる。正直言うと、これが一番の魅力だ ;-) 。
ミーティングのスケルトンは、「場所」と「時間」のマトリクス(グリッド)になっている。縦横二次元のシンプルな表だ。ひとつは時間帯。もうひとつは場所だ。 場所はインフォーマルでよい。数脚ほど椅子があればよい。 12〜24人程度なら、場所は4つもあれば十分だ。 たいていは、2つ3つしか使わないだろう。 それぞれ歩いて移動できる距離がいい。 ただ、私のような大声が邪魔にならないくらいは離れていたほうがいい。 Agile Universe 2001では、大きな部屋のコーナー毎に場所が設置してあった。 Crested Butteでは、2部屋とコーヒーショップを使用した。 foocampでは、広さの異なる部屋がいくつも用意されていた(この場合、部屋のおおまかな広さとプロジェクタの有無が表にマークされていた)。
セッションの長さは、私は1時間が好みだが、Owenは90分が好みのようだ。 これはどちらでも構わない。 また、セッションごとに15分から30分程度の休憩を入れて、インフォーマルな会話を行ってもらえるようにするのが好きだ。
まず最初に表を描こう。私はフリップチャートに描いている。 ポストイットを使ってセッションを表し、表のマス目に貼っていく。 Agile Universeでは表がもっと大きく、マス目がフリップチャートだった。 foocampではマス目に直接記入していた。 ただこれだとセッションを移動する際に不都合なので、私はポストイットのほうが好みだ。
カンファレンスを開始したら参加者をひとつの部屋に集め、できれば輪になってもらい 、オープンスペース手法について説明する。 それから、みんなにセッションを開催するよう促す。 誰もがセッションを開催できる。 セッションの概要とタイトルをみんなに告知するだけでよい。 セッションのタイトルは後から表に貼り出される。 エネルギーが分散しないよう続けて参加者たちに各セッションへの参加を促す。 最初からすべてのセッションを引き出す必要はない。 カンファレンスが進むにつれ、次々と新しいセッションが出てくるだろう。
セッションと開催者が決まったら、開催者にスケジュールを決めてもらう。 表のマス目にセッションを埋めてもらえばよい。 どのマス目にするかは開催者次第だ。 そうすると必然的に重なりがでてきてしまうわけだが、 そういうときは参加者が開催者を説得して、セッションの時間を調整してもらう。 できあがりは完璧ではないかもしれないが、それでも計画的手法よりはマシだろう。
表にセッションが貼られると、すべてが動き出す。 参加者はいつでも好きなときに表に新しいセッションを貼ってよい。 開催者はいつでも好きなときに自分のセッションを移動できる(ただし、直後のセッションを移動するのは賢明ではない)。 参加者はセッション終了後に表を見て次のセッションを決めるため、そのときは表を動かさないようにしておきたい。 セッションのところに絶対参加します!とかなんとか名前を書いておけば、 開催者のスケジュールの目安になるかもしれない。
セッションの合間やカンファレンス各日の最初にみんなを集めて円形になり、 追加されたセッションなどをアナウンスするというのもいいだろう。
イベントの記録が必要であれば、各開催者にセッションのサマリを書いてもらうとよい。 サマリを合わせればカンファレンスの記録になる。 Agile UniverseではWikiを使って行っていた。 まあ、それでもよいのだが、私はOwenのやり方が好きだ。 まず、各開催者にセッションのサマリを書いてもらう(Wikiに書いてもらってもいいだろう)。それらをプリントアウトし、壁に貼る。 私は断然、壁派だね。 みんなが簡単に見れるし、それでまた話が広がるからだ。 ただ、私自身はオープンスペースでカンファレンスの記録までやったことはない。 だから、この点についてはあまり経験がない。
Owenが、オープンスペースの1つの法則は「主体的移動の法則(The Row of Two Feet)(訳注:日本語訳の本から引用)だと述べている。 これは、何も学べないし貢献もできないと分かったら、もっと生産的な場所に移ったほうがよいというものだ。 つまり、セッションの移動は普通だよってことだ。 どうしても見たいセッションが重なっていた場合、 私ならそれぞれちょっとずつ見るだろう。 多くの人はこれが不自然だと思うようだ。 セッションの最中に席を立つのは失礼な行為だと信じているのだ。 しかし、オープンスペースに慣れれば、こっちのほうが快適になるだろう。
以上、オープンスペースについて簡単に述べてきた。 もしこの手法を使ってイベントを開催したいのであれば、情報はたくさんある。 まず、Owenの素晴らしい本★if a touch Californian for my taste★。 数ヶ国語に対応したWebサイトもある。