https://martinfowler.com/articles/202107-what-doing-now.html

数か月前、私は講演活動から退くことを記事にしました。執筆活動は続けているのかと疑問に思った方もいるでしょう。その記事の中では執筆中であると書きましたが、最近取り組んでいることについて、もう少しお話したほうがいいのではないかと考えました。

これまでの執筆活動と違うのは、本になるような大きなテーマには取り組んでいないことです。『リファクタリング』の第2版を完成させてからは、ほとんどの期間をこのウェブサイトに費やしてきました。数年間ずっと悩んでいたソースコードブランチ管理のパターンの記事にも数か月かかりました。それが終わってからは、放置したままだった2つの大きなテーマであるフロントエンドアーキテクチャとイベントに改めて取り組んでみようと考えました。しばらくの間、フロントエンドアーキテクチャの再検討に時間をかけました。20年前にリッチクライアントシステムで特定したパターンが、現在の世界のウェブやシングルページアプリケーションにマッピングできるのではないかと探りました。しかし、目に見えた進歩がなかったので、冷凍庫に戻してしまいました。ある週の朝に2回ほど集中して作業ができても、その後の数週間はまったく作業ができず、作業を再開しようと思ってもどこまでやったのか忘れてしまうのです。結局、勢いに乗れないまま終わりました。

なぜ時間を割けなかったのでしょうか?簡単に言えば、他にも多くの仕事をしていたからです。

そのひとつが、Thoughtworksのリーダーシップに関係するものです。Thoughtworksにおける私の役割はちょっと変わっています。管理職ではありませんが、私の考えを示すように求められるのです。同僚たちは何千人もの従業員を抱えるビジネスを運営していますが、私がそこに何か価値を提供できるようには思えません。それなのに、私に参加を求めてくるのです。私は彼らの判断を信じて、彼らが望むように、そこに参加しています。

この数か月間、私の頭の大部分を占めていたのは、重要な執筆活動をしている同僚たちと一緒に仕事をすることでした。このサイトをご覧になっている方は、Unmesh Joshiの「Patterns of Distributed Systems」の存在に気づいていると思います。Zhamak Denghaniは、データメッシュに関する彼女のアプローチを解説する本を執筆中です。そして先月、Ian Cartwright、Rob Horn、James Lewisによる「Patterns of Legacy Displacement」の最初の数セクションが公開されました。私はこれらの作品の共著者ではありませんが、多くの時間とエネルギーを使い、作品を前進させることを支援してきました。私よりも著者たちのほうが、最近のソフトウェア開発の現場に近いわけですから、私に貢献できるのはこれまでの執筆の経験と才能を活かして、彼らの経験やアイデアが世の中に出せるように後押しすることだと考えています。

年齢を重ねるごとに、以前のような活気がなくなってきたこともお伝えしておかなければいけません。執筆やプログラミングのようなクリエイティブな仕事をしていると、1日に使える時間は一般的な労働時間の8時間よりも短いことは以前からわかっていました。本当は私は熱心に働いていないのではないか、あるいはもっと効果的に働くべきではないか、そのように悩んでいました。悲しいことに、いまだにそう悩まずにはいられません。

自分でも執筆しているものもいくつかありますが、数週間作業をしなくても悲劇にならないように、小規模なものにしています。以前のような大きなテーマに取り組むことができないことに不満を感じている部分もありますが、ここ数年は私が支援した人たちが業界に影響を与えている様子を見て、非常に大きな満足感を得ています。

Martin Fowler: 29 Jun 2021