LLMとは誰か?
開発者が大規模言語モデル(LLM)を使うとき、そのモデルに人格(ペルソナ)を与える習慣が一般的になっている。私がはじめて出会ったのは、同僚のBirgittaが自分のLLMを頑固なロバ(名前はダスティー)と呼んでいたときだ。彼女がそう呼んだ理由は、以下のような特徴を持っていたからである。
- 助けたがる
- 頑固
- 博識だが未経験(D&Dファン向けに言うと「知力が高く、判断力が低い」)
- 自分が「知らない」ことを認めない
Kent Beckのジーニー(ランプの魔人)というペルソナも気に入っている。ランプを擦ると、ジーニーはこちらの言ったことをやってくれる。ただし、思った通りのことをやってくれるとは限らない。このペルソナは「偉大な力、助けたがる、助けたがるのに役に立たない」が混ざりあった状態をよく表している。
ジーニーは惑星サイズの脳でどれだけ複雑なことにも対応できると考えているようで、決して物事を単純化しようとしない。正しいうちは問題ないが、いったん間違えると破綻する。
Kentは「スロットマシンを使っているようだ」という表現も使っている。たまに当たりも出るが、基本的にはハズレを引く。当たりとハズレの確率はランダムのように見える。LLMはスロットマシンを続けさせるためにカジノが設計した中毒性アルゴリズムを使っているかのようだ。あるいは、たまに優しい面を見せる暴力的なパートナーのようでもある。
LLMをよく使っている人たちの話を聞くと、上手に使うにはかなりの努力が必要のようだ。「当たり」を引いたときは簡単に使っているように見えるが、それは幻想に過ぎない。LLMという技術に対する期待を歪め、いずれはフラストレーションにつながるだろう。
最近、強く印象に残ったペルソナはユライア・ヒープである。チャールズ・ディケンズの小説『デイヴィッド・コパフィールド』1に登場する人物だ。ヒープはひたすらへりくだり、自分は「謙虚」であり、目上の人たちの命令に従うだけだと何度も強調する。
「ありがとうございます、コパフィールド様!本当にその通りです!私は謙虚ですが、それが本当だと知っています!ありがとうございます、コパフィールド様!」
しかし、彼は悪意に満ちていて、彼が「仕えている」人たちを操り、支配している。
「ユライアは……」彼女は少しためらってから答えた。「パパにとって欠かせない存在になりました。彼は狡猾で油断なりません。パパの弱さを見抜き、そこに付け込み、利用してきました。要するに、トロットウッド、パパは彼を恐れるようになりました」。
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ディケンズは記憶に残るキャラクターを作るのがとても上手なので、十代の頃に読んだ本でもヒープのことを覚えている。引用に使えそうな箇所を探して本を見返したところ、ディケンズの文章力の高さを改めて感じた。ずいぶん昔に読んだのに覚えている場面が多く、文章そのものが懐かしく感じられることに驚いた。 ↩